パインアップルのシーズンが始まりました
各地でパインアップルの収穫の最盛期にかかりつつある5月1日、沖縄県産パインアップル旬入り宣言が行われました。今年も、生産農家のみなさんが丹精込めて育てた旬のフルーツが出回りますよ。
沖縄では、県パイン・果樹生産振興対策協議会が毎年8月1日を「パインの日」と定めていますが、県内で栽培されている品種のうち石垣島と西表島ではポコット(ボゴール)やピーチパイン(ソフトタッチ)の出荷が早い年だと3月下旬から始まりますので、5月1日を県産パインの旬入りとしているんですよ。
今年の石垣島と西表島では4月上旬からピーチパインとポコットの収穫が始まりました。夏を迎えるにつれてジュワリー(ハワイ種)やゴールドバレル、ホワイトココなどが次々と旬を迎えます。JAおきなわによると今年の石垣島のパインは700トンの出荷を予定しているそうです。西表島は個選個販のBtoCが中心なので、インターネット通販や現地に行って味わってみてくださいね。品種は一緒ですが、土の質や肥培管理でパインの味はびっくりするほどかわりますよ。

2年半もの間、大切に育てられて収穫されたパイン。
人気の「ゴールドバレル」
最近、注目されるのは、高級パインとして人気の「ゴールドバレル」です。定番の小玉のボゴールや定番種のジュワリーが数百円で手に入るのに対して、管理が難しく栽培農家が少ないゴールドバレルは高値で取引されています。でも、石垣島で購入すれば大玉(約2キロ)で2000円前後と手ごろな価格で販売されています。
今年の夏は、石垣島の甘くてみずみずしいパインとマンゴーを味わってみてはいかがでしょうか。
ちなみにわが家では、私と妻はハワイ種、子どもたちは當銘農園のピーチパインがお気に入りです。
宿があるおもと集落のとなりにある川原地区は、石垣島の中でもパインの一大産地でどこの農家のパインもおいしいです。川原地区では無人販売もしていますので、本当においしい完熟パインを食べてみてくださいね。
島でしか食べられない完熟パイン
パインは追熟しませんので、完熟は畑で完成します。ただ、販売用は日持ちを考えて完熟前に収穫してしまいますので、本来のおいしさが発揮できないのです。特に島外発送用は未熟なうちに収穫してしまいますので、その味の差は歴然。ぜひとも完熟したパインを島に来て食べてくださいね。しかも完熟パインはスーパーや発送に使えないので安いのです!

無人販売で購入した安くておいしい完熟パイン。
沖縄県産パイン7品種の特色一覧表
品種名 (商標名・通称) | 甘み | 酸味 | 収穫時期 | 特色・味わい |
|---|---|---|---|---|
ボゴール | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | 4月〜8月中旬 | 手でちぎって食べられる楽しい品種。固めの果肉ですが、芯まで食べられます。 |
ソフトタッチ | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 4月下旬〜8月中旬 | 完熟すると桃のような芳醇な香りが漂う。やや小ぶりで果肉が非常に柔らかい。 |
N67-10 | ★★☆☆☆ | ★★★★☆ | 6月〜9月中旬 | 沖縄の伝統を支える最主力種。果汁が豊富で、生食・加工のどちらにも万能。大玉で価格も安め。 |
ゴールドバレル | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | 5月下旬〜8月上旬 | 約20年かけて開発された最高級ブランド。樽型の大玉で、酸味が少なく濃厚。果肉は柔らかめで芯まで食べられます。 |
ジュリオスター | ★★★☆☆ | ★★★☆☆ | 6月中旬〜9月 | 夏の終わり(8月〜9月)に収穫できるように開発された、日持ちの優れた品種。果汁が豊富で甘酸っぱくあわやかな味わい。 |
沖農P17 | ★★★★★ | ★☆☆☆☆ | 5月〜11月 | 沖縄7品種の中で、最も甘いクリーミーな品種。大玉で夏のギフト用として人気が急上昇中。 |
沖農P19 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | 5月〜9月 | 2022年に誕生した最新の大玉品種。ココナッツのようなトロピカルな香りが特徴。7品種の中で、最も果肉が柔らかいです。 |
沖縄のパインの歴史
1. 沖縄パインアップルの歴史:栄光、挫折、そして「生食」への大逆転
沖縄のパイン栽培の歴史は、1860年代半ばにさかのぼります。石垣島沖でオランダ船が座礁した際、川平湾に漂着した苗が沖縄に伝わった最初のパインだといわれています。
本格的な産業としての歩みは昭和初期からです。1927年に台湾から「スムースカイエン種」という優れた改良品種が導入され、本島北部や石垣島で委託栽培がスタートしました。当初は苦難の連続でしたが、昭和30年代に台湾から入植した農家たちが水牛を操り未開墾地を切り開いたことで、ようやく大量栽培の軌道に乗りました。
2. 「加工用パイン王国」としての黄金時代
戦後、アメリカ統治下の沖縄において、パインアップルはさとうきびと並ぶ「島の経済を支える巨大なエンジン」となりました。
1950〜60年代、日本では生のフルーツの輸入が厳しく制限されていたため、国内唯一の熱帯・亜熱帯地域である沖縄産のパイン缶詰は飛ぶように売れました。
1967年には、米国ハワイから導入された種苗の中から、沖縄の気候に最も適した省力多収型の優良系統「N67-10(ハワイ種)」が選抜されます。これが大ヒットし、1969年の最盛期には年間約10万トンもの生産量を記録。沖縄の輸出総額の17%以上をパイン缶詰が占め、北部地域には多くの「パイン御殿」が建ち並ぶ黄金時代を迎えました。石垣島でも大きなパイン工場が整備され、多くの人たちが働いていました。宮良にあった一番大きなパイン工場の跡地は、現在では請福酒造の酒造所になっています。
3. 「自由化」という黒船と壊滅的な挫折
しかし、栄光は長く続きませんでした。1972年の本土復帰、そして1990年の「パインアップル缶詰の輸入完全自由化」が沖縄の産業を直撃しました。
フィリピンやタイなどから、圧倒的に人件費・土地代の安い外国産の缶詰が激流のように国内へ流入。価格競争に敗れた沖縄の缶詰工場は次々と閉鎖へ追い込まれ、生産量は最盛期の10分の1以下へと激減しました。栽培を諦め、畑を手放す農家が相次ぐ「冬の時代」が到来したのです。
4. 奇跡の共同作戦:「量」から「質(生食)」への大逆転
ここから沖縄のパイン産業は、前代未聞の「缶詰(加工)から、生食用フルーツへのシフト」という大博打に出ます。安さで勝てないなら、外国産には絶対真似できない「圧倒的な美味しさと個性」で勝負する道を選んだのです。
沖縄県農業研究センター(旧試験場)、行政、JA、そして意欲ある農家たちが一体となり、新品種の開発と普及を進めました。
手でちぎって食べられるエンタメ性を備えた「ボゴール(スナックパイン)」
桃の香りがする驚きを与えた「ソフトタッチ(ピーチパイン)」
20年の歳月をかけて生み出された究極の高級パイン「ゴールドバレル」
これらのユニークな生食用パインは瞬く間に消費者の心を掴み、2000年頃には生食用の出荷量が加工用を完全に逆転しました。
品種も豊富になり、食味も追及されて本場の台湾に負けないほどの個性豊かなパインが栽培されるようになりました。中国が台湾産パインの輸入規制を行った時、台湾産のパインが大量に国内に入ってきましたが、心配されたほどの影響はなく出荷減にはなりませんでした。
5. そして未来へ、進化を続ける沖縄パイン
現在、沖縄のパイン生産量は約7,500トン前後で高止まりしていますが、その9割近くが高品質な生食用として高値で取引されています。さらに近年では、収穫期をずらして長く楽しめる「ジュリオスター」や、濃厚な甘みの「沖農P17(サンドルチェ)」、ココナッツ香の最新種「沖農P19(ホワイトココ)」など、日本の高い育種技術が生んだ傑作が次々と前線に投入されています。
漂着した一握りの苗から始まり、世界の荒波に揉まれながらも「最高級ブランドフルーツ」として奇跡の復活を遂げたストーリー。それこそが、沖縄パインアップルの歴史なのです。
沖縄県の育種の総合的な選抜基準
栽培の容易性:葉に棘がないこと(作業時のケガ防止や管理の効率化)
果実品質:糖度が高い(14度以上など)、酸味が少ない、芳醇な香りがある
外観とサイズ:1〜1.5 kg程度の適切な大きさと美しい形
耐病性・育てやすさ:病気に強く、日本の台風に耐えうること
棘なしの重要性
沖縄県などの産地では、「スナックパイン(ボゴール種)」など棘のある品種も人気ですが、棘があると栽培や収穫の際に作業者がケガをしやすく、収穫後の箱詰め作業にも非常に手間がかかります。そのため、沖縄県が開発した「ゆがふ」などの品種のように、作業の省力化(栽培の容易性)の観点から「棘なし」は最重要項目の一つとして位置づけられています。
実際の選抜プロセス
人工交配によって数千個体の種子(実生)から苗を育てますが、初期段階では成長の早さや「棘の有無」といった外観的な特徴で絞り込まれます。その後、実際に実がなった段階で「糖度の高さ」や「食感」などの厳しい官能評価をクリアしたものが最終選抜されるため、「棘がないこと」と「美味しいこと」は車の両輪のような関係になっています。
このように、栽培管理をスムーズにするための「棘なし」は、品種として世に出るための必須条件(基本スペック)として扱われています。